■ 第1形態:歯茎の隙間ニート「ネバ・ジンジ」

<解説>
歯と歯茎の間の、暗くてジメジメした隙間(歯周ポケット)が実家。
酸素が大嫌いで、歯ブラシの毛先が届かない奥深く引きこもっている。
主食は、あなたが歯磨きをサボった日の残りカスと、歯茎からの出血。
「あ、今日疲れてそのまま寝ちゃう感じ?ラッキー♪」と囁きながら、仲間を呼んでネバネバした集落(バイオフィルム)を作り始める。
まだ戦闘力は低いが、口が臭いのはだいたいこいつのせい。
■ 第2形態:歯石の魔王「ロード・オブ・ジンジバリス」

攻撃力 200
体 力 3,000
<解説>
長年の放置により、ネバネバがカチカチの鎧(歯石)に進化した姿。
もう歯ブラシ程度ではビクともしない、お口の絶対君主。
強力な酵素の槍を振り回し、歯を支える骨を溶かすことに無上の喜びを感じている。
「フハハ!お前の歯、グラグラにしてやんよ!」と高笑いし、歯茎を真っ赤に腫れ上がらせる。
最終目標は、宿主の歯をすべて奪い去ること。まさに外道。
【ロバストネス・メモ:専門家による補足】
実在する「ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」とは?
理学療法士として言わせていただくと、こいつは「お口の中だけの問題児」ではありません。全身のロバストネス(強靭な健康)を脅かす、極めて危険なヴィランです。
ジンジバリス菌は、最も悪性度が高いとされる歯周病菌の一種です(レッドコンプレックスと呼ばれます)。嫌気性(酸素が苦手)なので、歯周ポケットの奥深く潜り込み、強力なタンパク質分解酵素「ジンジパイン」を出して歯茎や骨を破壊します。これが歯周病の進行です。
さらに恐ろしいのは、こいつらが炎症を起こした歯茎の血管から侵入し、全身を巡ることです。血管を傷つけて動脈硬化を促進させたり、糖尿病を悪化させたり、誤嚥性肺炎やアルツハイマー型認知症のリスクを高めたりと、全身疾患の引き金になることが近年の研究で明らかになっています。
ヴィラン攻略法:口腔ケアは全身防衛の要
こいつを倒すのに、特別な必殺技はいりません。地道な「兵站維持活動」が最強の攻略法です。
- 毎日のフロス・歯間ブラシは義務:
歯ブラシだけでは、こいつらのアジト(歯間)の汚れは6割しか落ちません。フロスや歯間ブラシを使って、物理的にアジトを破壊してください。これは「掃除」ではなく「防衛戦」です。 - 3ヶ月に1回のプロによる「リセット」:
第2形態(歯石)になってしまうと、自力では除去不可能です。歯科医院でプロのクリーニング(PMTC)を受け、強制的にリセットしましょう。定期検診は、ロバストネスを維持するための最もコストパフォーマンスの良い投資です。 - 口呼吸をやめる:
口の中が乾燥すると、こいつらにとって快適な環境になります。鼻呼吸を意識し、唾液で口の中を潤すことも重要な防御策です。
「たかが歯周病」と侮るなかれ。口の中を健康に保つことは、将来の寝たきりや認知症を防ぎ、生涯現役でいるための「強靭な身体作り」の第一歩なのです。

