ICFを使ってみましょう「木を見て森を見ず」

自己紹介

はじめまして!NOVAST理事の種坂です。これから毎月1回程の頻度で記事を書いていきます。なるべく皆さんの為になる物を提供できれば幸いです。今日は初回ですので、まずは自己紹介をさせて下さいね。

私は、理学療法士として急性期、外来、回復期、生活期などで10年間働いてきました。現在は介護保険施設で施設長をしながら、トレーナーや地域の介護予防指導員として対象者の年齢を問わず幅広い方への活動をしております。

私は体を動かしたり、体の使い方を習得するのが好きで色々なセミナーや講習会、勉強会に参加してきました。その中で「NOVAST」に出会い、理論や考え方に共感を持ちマスターの資格を取得して現在に至ります。

ここでは、現在私自身が意識してクライアント様に実行している考え方や方法などを取り上げてお話していこうと思います。

木を見て森を見ず

皆さん「木を見て森を見ず」という言葉。一度は聞いた事があるのではないでしょうか?

私は物事が上手くいかなかった時、必ずこの言葉を思い出します。実は、医療業界にもこれに似た考えがあります。それは、「ICF」という概念です。この概念を理解しておくと、クライアント様からの満足度がぐっと上がるはずです。

「ICF」とは、International Classification of Functioning, Disability and Health の略で、国際生活機能分類の事です。何だか良く分からないかもしれませんが、まずは、対象となるクライアント様の「全体像を理解する為の共通言語」と思って貰えれば良いです。

ではICFについて、詳しく説明していきます。次の図を見ながら内容を理解していきましょう。

ICFについての説明

ICFには、生活機能という考え方があります。生活機能とは人が生きる事であり、「心身機能・活動・参加」の3つのレベルからなります。また、健康とはこの生活機能が高水準な事を意味します。つまり、生活機能の水準が下がると障がいと言い換える事ができます。具体的には、「心身機能」は手足や体の動き、精神の働き、視覚・聴覚、内臓の働きなどを指します。「活動」は生きていくのに役立つ行為で、日常生活活動から家事・仕事・趣味など生活行為全てを意味します。「参加」は社会的な出来事に関与したり役割を果たす事で、主婦としての役割、地域社会の役割、クラブ活動への参加などが挙げられます。生活機能はそれぞれ、その方の生命・生活・人生とも言われています。

その他にICFの大きな特徴として、「環境因子」と「個人因子」があります。こちらは2つ合わせて「背景因子」とも呼ばれます。「環境因子」は、建物・道路・交通機関・自然環境のような物的な環境と家族、友人、仕事上の仲間など人的環境、さらに、医療・介護などの制度的な環境も含まれ広い意味を示します。「個人因子」はその人の個性の事で、年齢、性別、民族、生活歴(職業歴、学歴、家族歴、等々)、価値観、ライフスタイルを指します。

そして、このモデル図の矢印が重要で、生活機能の3つのレベル(心身機能・活動・参加)はそれぞれが単独に存在するのではなく、相互に影響を与え合い、また「健康状態」・「環境因子」「個人因子」からも影響を受けます。これを示すためにこのモデル図では、ほとんどすべての要素が双方向の矢印で結ばれています。これは、「すべてがすべてと影響しあう」相互作用モデルと言われています。

ここまで、なんとなく理解できましたかね?詳しく知りたい方は以下に厚労省のリンクをつけましたのでご参照下さい。【ICF(国際生活機能分類)「生きることの全体像」についての「共通言語」 】

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf#search=’ICF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6′

ICFによるクライアント例

さあ、これを実際にどう使うのか?先ほどの図を使って説明していきますね。

現在、新型コロナウイルスの影響で様々な身体的な不調が懸念されています。皆様の周りにも、実際にこんなクライアント様いませんでしたか?

新型コロナウイルスの影響で、在宅ワークとなったA様。「最近、とにかく肩こりがひどくて頭痛もある。何とかして下さい…」と。「じゃあ、とりあえずストレッチとリリースやりますね!」…と簡単に考えるのは早いです。

色々なお話をしている中で、生活機能や背景因子に関する事が見えてきました。先ほどのICFに落とし込んでみましょう。

健康状態は「肩こり・頭痛」、心身機能は異常な姿勢が続いた事による「マルアライメント(骨の配列が崩れた状態の事です)」、活動は在宅ワークに変わったことにより「長時間の座位」を強いられている事、参加はずっと通っていた「スポーツクラブが閉鎖」した事による参加の制限。また、背景の側面から、普段の会社の机や椅子と違う「不適合な環境」でのデスクワーク、在宅ワークにより仕事の最中に家族の邪魔が入る「ストレス」が浮かび上がってきました。

こうしてみると、最初に考えた「とりあえずストレッチとリリース」だけでは、問題は解決しないような気がしますよね。健康状態は全ての要因と相互に影響を与え合っているので、広い概念で解決していかないと、クライアント様の満足は得られないかもしれません。

例えば、「机と椅子の適切な高さと距離ってご存じですか?」と環境因子に焦点を当てたり、「スポーツクラブに行けなくなって残念ですね…では、今度オンラインフィットネスのイベントがあるので一緒にいかがですか?ストレス解消にもなりますよ!」と参加制限にアプローチする事で心身機能だけの改善だけでなく、幅広い視点で健康状態を改善し今よりさらに高い満足を得られるはずです。

勿論、これは心身機能の改善につながる基本的なストレッチやリリースの技術を施したうえでのアプローチです。あくまでプラスαの付加価値として、この概念を知っておくと応対の幅が広がります。

さいごに

とここまで、ICFの説明を具体的な例を用いて紹介してきましたが、いかがでしたか?様々なクライアント様にも応用できるはずです。機能的な面を追求するあまり、「木を見て森を見ず」になっていませんか。クライアント様の全体像を理解する上で、一度ICFの概念を使用してみてはいかがでしょうか。

ではまた!

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