日光に当たりすぎると皮膚がんの原因になるが、日光に当たらないとビタミンD不足になるというのは有名な話です。
また、動き過ぎると体を傷めます(オーバーユース)が、動かなすぎるとパフォーマンスが低下します(ディスユース)。
ストレッチも同様に、伸ばしすぎると筋肉を損傷させてしまいますが、伸ばし方が不足すれば効果が得られないので注意が必要です。
どんな良いものでも『過ぎたるは猶及ばざるが如し』となります。
では、適切な刺激とは?ここではホルミシス効果についてお話します。
ホルミシス効果とは
『ホルミシス』という言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれません。
私も予防医学を学ぶまでは聞いたこともありませんでしたが、いわゆる『健康的な生活』の中にはホルミシス効果が至る所にみられます。
例えば、冒頭に述べた日光もホルミシスです。
微量な紫外線により皮膚にあるコレステロールがビタミンDに変身し、免疫力や骨の強度を高めてくれます。
他にも野菜や果物に含まれるポリフェノールやカロテノイドなど、こうした健康に良いとされるフィトケミカルもホルミシスです。
本来は果実を守るための毒として存在しますが、人間にとっては適度な刺激になるわけです。
つまり、ホルミシス効果とは強度が強いと有害になるものの、その強度が微弱であれば有益に働くことを言います。
フリードリヒ・ニーチェの言葉に『私の息の根を止めることができないものは、かえって私を一層強くする』という言葉がありますが、まさにホルミシスを表しています。
ただし、あくまでも適度な刺激でなければなりません。
負荷が強すぎた場合は、息の根が止まらなかったとしても後遺症が残るので弱くなってしまいます。
ストレッチで得られるホルミシス効果
ストレッチも非常に軽い運動であり、ホルミシス効果が得られます。
筋肉も細胞(筋細胞と筋繊維は同じもの)ですから刺激が入れば反応してくれるのです。
こうした刺激によって『メカノトランスダクション』というメカニズムが働きます。
また、筋細胞の壁から『マイオカイン』という物質が分泌されることも分かってきました。
これらの作用により、筋繊維の柔軟性を改善したり、筋肉の過剰な緊張を和らげたり、血行を改善したり、炎症を軽減したり、さまざまなホルミシス効果が得られます。
昔からストレッチや柔軟体操は身体に良いとされてきましたが、何がどう良いのか具体的に説明されず、慣習として行われてきました。
ようやく分子レベルでその証拠を示せるようになってきたわけですね。
ストレッチによるホルミシス効果の注意点
さて、ここで注意すべき点はストレッチの強度です。
弱すぎればホルミシス効果は得られず、強すぎれば過剰なメカノトランスダクションが起こり逆効果となってしまいます。
他の組織でも同様ですが、特に筋繊維は収縮する能力を持っているので張力が強く働き過ぎる可能性が高いです。
そのため、適度な刺激となるように『エンドフィール』を知る必要があります。
エンドフィールとは最終域の感じ方です。
自分で行うセルフストレッチの場合は痛みがなく心地良い程度が最適です。
パートナーストレッチの場合はストレッチを受ける相手に合わせる必要があるので訓練が必要です。
NOVASTストレッチ協会では十分な練習時間を設け、とにかく最適な伸張感でストレッチができるようにしています。
なぜならここが間違っていたらホルミシス効果が得られないどころか怪我をさせてしまう可能性もあるからです。
足るを知る者は富む、正しいストレッチを習得して健康の増進を図りましょう。