本日は私の勤務している主なフィールドである「生活期のリハビリテーション」についてご紹介します。維持期という言葉もありますが、ここでは生活期とさせて頂きますね。生活期のリハビリテーションには主に4つの役割があります。それでは説明していきます。
時間軸で見たリハビリテーション
リハビリテーションは時間軸で「急性期リハ」「回復期リハ」「生活期リハ」「介護期・終末期」と大きく分類する事ができます。何かしらの疾病となり、高度な急性期治療を行い、急性期リハである「治すリハビリテーション」を受け、その後回復期リハで日常生活活動の機能回復をメインとする「支えるリハビリテーション」を経て、在宅生活へ戻り、「生活者としてのリハビリテーション」である生活期リハ、そして悪性新生物や進行性疾患、経年による老衰など、終末期リハビリテーションと経過をたどるのが一般的かと思います。※以下の図をご参照下さい。
今回の生活期にフォーカスすると、さらに「混乱期」「安定期」「展開期」と分ける事ができます。具体的には、例えば脳梗塞で入院された方がいたとして、急性期と回復期でリハビリを受けて、自宅に退院することになったとしましょう。その方は、退院直後は今までの身体の状況とは全く異なる為、そのギャップに混乱をされます。(実際には混乱しないように、環境整備や環境適応、サービスの介入などありますが、細かい事は置いておいて)それが「混乱期」です。そして、その後、病状を受け入れたり、生活に慣れてくるようになるとご自身の1日の生活、1週間の生活、1ヶ月の生活と大体の事が定着して安定してきます。これが「安定期」。そして、身の回りの生活が安定してきたら、「活動」や「参加」といった、その人らしい生活や生きがい、やりがいを取り戻す為に行動範囲や社会参加が増えてきます。これを「展開期」と呼びます。
リハビリテーションの時間軸での流れと、生活期の経過について理解できましたか?それでは、今回の生活期の役割については次の章でお伝えしていきますね。
生活期リハビリテーションの4つの役割
急性期と回復期を終えた生活期でのリハビリテーションでは、以下のように4つの役割があると言われています。
- 退院後(主に直後)の在宅生活の安定化支援
- 在宅生活の継続支援
- 活動と参加支援
- 人としての尊厳を全うする事を援助
です。いかがでしょうか。ピンとこないですよね。以下で解説していきます。
先ほどの脳梗塞になった方の例でイメージしていきましょう。
①は退院して新しい生活となり、今まで何も考えずに自宅で動けていた事と、病気によりスムーズに動けなくなった事によるギャップによって、色々な事が不安定となります。それは、足が上がらなくて転びそうになったり、自由に家から出る事が困難になったり、友人と気軽にあって話す事ができなくなる、趣味活動ができなくなる…など様々です。しかしまずは、「生活の安定」がメインとなります。それは、入院中に獲得した「立って、歩く」「トイレにいく」「入浴する」「段差をこえて家から出る」など身の回りの事の安定化が最重要となります。こちらを支援していく事がまずはじめの役割です。
それは、直接的なリハビリテーションで上記の「立って歩く」…などの実地練習が必要かもしれません。あるいは、手すりの設置や浴槽の改修、歩行補助具の選定(杖・歩行器など)かもしれません。また、家族の負担やいわゆるレスパイト機能の為に、通いのリハビリテーションが必要な場合もあります。とにかく、退院して直後の新しい生活を軌道に乗せる為に様々な形でソフトランディングさせたリハビリテーションの支援が必要となります。
②は①の状態が安定したら、その生活が継続できるように「モニタリング」「評価」を行います。筋力や体力が低下して、日常生活の動作がやりずらくなっていないか?精神面は大丈夫か?その方が抱える疾患での急性増悪の徴候は見られないか?などその状況や疾患に合わせた身体機能や認知機能などの評価を継続して実施します。未然に予防する事で、早期に気づき対応できるので重度化の予防が可能となります。
③は②と同様に生活が安定したら、「その人らしい生活の再構築と援助」の為のリハビリテーションを行います。それは、「活動と参加」とも呼ばれますが、具体的には、その方の「役割」だったり「生きがい」だったりします。例えば、家事動作、趣味、仕事、町内の役員、ボランティア、宗教活動…など様々です。疾病によって入院して、一度失われた「役割」や「生きがい」を入院中に回復させた機能と紐づける作業を行います。それは、通所や訪問でのリハビリテーションで実施する事が多いです。その活動や参加はその方の能力にとって、妥当か、安全に行えるか、障害適応を促す地域環境とのマッチングなども行います。
④は重度者や終末期の方への援助です。最後まで人間らしく全く寝たきりではなく可能な範囲で身体を動かす事は必要です。
例えば、
最後までできるだけ口から食事をとりたいという方には、嚥下訓練によって自分の口で食べる実感が持てた。
床ずれ防止の為の寝返り訓練を行ったり、福祉用具を変更する事で、自分で体位を変換する事ができ、自分で痛みを軽減する方法に気づいた。
など、重度や終末期の方でも最後まで自己選択や家族の希望を援助する事は可能です。それはリハビリテーションの視点で向き合い、身体の可動範囲や筋力、日常生活動作を急激に低下させるのではなく、できるだけ緩やかにさせる事も人間らしく生きる事に重要な事です。
さいごに
今回は生活期のリハビリテーション「4つの役割」について説明しました。こちらの内容は日本訪問リハビリテーション協会会長の宮田先生がお話ししていた事を私の経験なども踏まえてまとめたものです。生活期のリハビリテーションでは、患者さん、利用者さんである前に「生活者」である事をまず念頭に置く事が重要だと思います。私も、生活者である患者さんや利用者さんにできるだけ寄り添ったリハビリテーションが提供できるよう日々努力していきます!ではまた!